2016年1月24日日曜日

「人に歴史あり」

昨日、サブちゃんのPV撮影をした。監督・藤原、出演・北島、4分半の楽曲の映像をおよそ5時間かけて撮影をした。予算はいつもと一緒なのに、市民会館の大ホールを借り切って撮った。本人も驚いていたが、関係者に言わせると「藤原さんの趣味でやっているから・・・」と言ったとか。趣味じゃないけど、採算度外視という面は、確かにあるな・・・北島さんだから。

歌唱シーンの撮影から始めたのだが、何回目かのテークのあと、歌い終わったサブちゃんがウインクをした。モニター画面で見ていたのだが、みんなの笑い声のなかで、彼の声が聞こえた。「藤原にウインクしたんだよ」。俺、うかつにも涙。なぜ?50年の歴史が一気に押し寄せてきたからだ。

彼との出会いからすでに50年、考えてみれば数奇な運命のような気もする。昭和41年に集団就職で上京し、その翌年16歳の時に彼の専属バンドの楽団員になった。3年間在籍した。数々の職業を経験してたどり着いた番組制作という仕事。彼との出会いは「番組」という形で生かされた。沢山の北島番組を創ったが、最近のPVの仕事は彼の指名で創っている。嬉しいけど・・・

彼は会場に入るなり「藤原!いったい何をやりたいんだ!」とお決まりのポーズから入る。だが、いざ始まると一切文句をいう人ではない。何回かダメ出しをして、疲れただろうからもういいかな、と思っていると藤原の顔を見て「いいよ、もう一回」という。「さっき嫌だと言ってたじゃないか!」と心の中でつぶやくのだが、嬉しくもある。信頼関係が見える瞬間だ。

一瞬にして50年の歴史が流れてゆく時間でもある。出会いがあったから今がある。今があるから、いずれ別れが来る・・・さまざまを思いながら、5時間の収録は無事終わった。笑い声が絶えない、楽しい現場だった。「人に歴史あり」、つくづく思うのだった。